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著者:西加奈子 / 出版社:河出書房新社 / 発売日:2023年4月19日 / 単行本:256ページ / ジャンル:ノンフィクション
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──私は恐れを抱きしめた。私が作り、長らく私を苦しめてきたこの恐れを、私は今こそ自分の、このたった一人の自分のものとして、抱きしめなければならなかった。
西加奈子さんの最新作『くもをさがす』が、河出書房新社より4月19日に刊行されます。
本作は、2021年のコロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告されたときから、治療を終えるまでの約8ヶ月間の日々を克明に描いた、著者初のノンフィクション作品です。
〈蜘蛛はどうして、私をあんなにも噛んだのだろう。〉
胸のしこりに気づきながらも、海外で医療を受けることが億劫で、努めて楽観的になっていた日々。
蜘蛛に噛まれたことで発覚したがん。
〈8月17日 今日、乳がんと宣告された。〉
その日から付け始めた日記。
慣れない文化、拙い言語で臨む治療。不安や希望や恐れの入り交じる思い、家族や友人からもらった安らぎ、差し出された情で濡れた手。
〈1月13日 もう許してください。〉
医療に寄りかかれる頼もしさ、明日を生きる力を与えてくれた数々の文学作品。それでも「どうして私が。」と思わずにはいられない胸の内。
〈私は私だ。私がニシカナコなのだと、その時、強烈に思った。〉
渦巻く感情の中で自分を取り戻し、寛解したがん。しかし新しい日常に待っていたものとはーー。
〈待って、まだ怖いねん。〉
いちはやく本書を読ませていただき、ひと言めに口を突いたのは、「ありがとう」という感謝の言葉でした。
私自身は幸いなことにまだ大きな病気を経験したことはないけれど、身近な人の病に立ち会う経験は少なからずあり、けれどその日々を、自分の言葉で書き残すという行為を避けていたからです。そうすることで現実に起きていることをうやむやにしたかった。蓋をしたままやり過ごしてきた感情が、だから西さんの言葉によって解かれていくのを感じたのでした。
この本に書かれていることを自分ごととして読む人の数は、等しく、自分も含め大切な命を失うかもしれない不安の日々を過ごした人の数と同じなのではないでしょうか。
治療中の西さんが、数々の文学作品の言葉と共にあったように、『くもをさがす』の言葉に立ち止まって考えたり、前に進む力をもらう人がどれほど多いのか。想像せずにはいられません。
西加奈子さんが祈りとともに書き残してくれた『くもをさがす』を、「あなた」に向けて大切に届けていきます。この場所で出合っていただけたら、そんなに嬉しいことはありません。
【ご購入後の流れ】
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